往復書簡「うつっぽについての問題点」
先日リリースした「うつっぽ」について、賛否両論色々な意見をいただいています。
U2plusとしてうつっぽどういう目的で公開し、どう使っていただきたいかなどは別エントリーで書こうと思いますが、今回はひとまずレンタル空手家の遠藤さんからいただいたご意見と、それにたいする東藤の返信を公開させていただきます。
遠藤さんからは許諾をいただいています。
以下遠藤さんからのメール
こんにちは。
レンタル空手家の遠藤です。
ツイッターでもリプしたのですが、「うつっぽ」、このサービス、停止するか、大幅改造した後のリリースし直し、しませんか?
これはライフリンクさんの活動の問題とも一緒で
「困っている当事者に自分は関わろうとせず、専門機関に丸投げする」
という、うつへの効果検証が確かでないばかりか、当事者に孤独感、突き放された感を与えるものです。
ライフリンクさんをメンヘラ当事者は支持していませんが、同じシステムを作ろうとしています。
他の問題店は、ツイッターなどで他から指摘されているように、匿名であることでいやがらせなどにも使われてしまいますよね。
代替案は、このサービスを続けるなら、送る人を実名確認の上、登録審査してうつプラスさんのほうで保管する。
その上で、送りたい相手に送れるようにし、なおかつメールの最後に「私のメールアドレスはこちらです」と、相手から送れるようにする。
最低限上をクリアしなければ、サービスは停止ではないでしょうか。
このサービスは、サービスの影響で不利益をこうむったひとが出ても(自殺含みます)、責任のとれないサービスです。
東藤さんたちの活動は、同じ当事者の作る事業サービスとして、応援したい気持ちがあります。
ですが、今回はほとんど事前の当事者リサーチをしていないのではないかと思わせるくらい、雑で有害になる可能性を持つものに感じてしまいます。
いかが、思われますか?
以下が東藤のメールです。
ご連絡ありがとうございます。
U2plusの東藤です。
> これはライフリンクさんの活動の問題とも一緒で
> 「困っている当事者に自分は関わろうとせず、専門機関に丸投げする」
> という、うつへの効果検証が確かでないばかりか、当事者に孤独感、突き放された感を与えるものです。
このご指摘、まさにその通りだと思います。
当事者にしっかりと向き合い、サポートしていくことが最も効果的だと思います。
しかし、「当事者に自分が関わり、ケアをしていく」というのは本当に消耗しますし、
毎日何時間も電話が来るなど、依存されることもあります。
精神疾患に専門知識がある方、例えば経験を重ねた臨床心理士でも「2週間で1時間」と必ず時間を限定しています。
そうでないと、自分が弱っていくからです。
普通の人がきちんと関わろうとすると、強い関係性か、ある程度の知識があるか、
なくてもしっかりと向き合う時間を確保できる必要があります。
例えば「職場で同じフロアだけれど、ほとんど話した事がない」
人がうつっぽい兆候を示していたとき、それだけのサポートをしようと思うでしょうか。
中途半端に関わり、「一度全面的に信頼した人が、(対応に疲れて)急に自分から離れていってしまう」ことこそ、
孤独感を与えるのではないでしょうか。
サービス設計時、周囲の方は以下の3パターンになるのではないかと考えました。
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1.兆候に気がついてしっかりと向き合うことのできる人
2.兆候にきがついているけど、向き合えない人
3.兆候に気がつかない人
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みなが1.であれば勿論問題はありません。(最低限家族はここにあてはまってほしいと思いますが)
しかし、2.3.の人々の方が多数ではないでしょうか。
2.の人には「自分は関われないが、予防、回復、支援する情報を提供できるようにする」
3.の人には「うつっぽのトップページを見て、最低限の知識を持ち周囲を見渡してもらう」
というのがうつっぽの目的です。
1.の人は、うつっぽを使わずに自分でメールか電話をするでしょうし、
距離が近いのであれば、直接話すでしょう。
うつっぽは「自分は積極的に関われない、でも」という人に使ってもらうためのツールです。
ベストでは全くないですが、それでも僕は現状より少しでも可能性のあることを続けていく他ないと思います。
そのため匿名性はサービス上必要不可欠だと考えています。
また、対象となる方の自己認識を4つに分類しています。
=======================================
1.うつの兆候が見えていて、情報収集をしていない人
2.うつの兆候が見えていて、情報収集をしている人
3.うつになっていて、自分で気がついていない人
4.うつになっていて、自分で気がついている人
=======================================
うつっぽのターゲットは
1.2.3.です。
1.の方は「調子がおかしいが、なんなのかわからない」「調子がおかしいことにも気がつかない」
状態だと推測できるので、まずはうつになりかけている可能性があることを伝え、
基本的な情報や、予防方法の提供が必要だと考えます。
2.の方は上記に加え、そして必要があるのであれば受診への背中を押すことができる可能性があります。
3.の方は「調子が完全におかしいが、なんなのかわかず混乱している」状態だと推測できます。
受診のすすめ、社会保障制度などの情報提供が必要ではないでしょうか。
うつっぽを送られて、いい気分になる人はいないと思いますが、
少なくともこれらの方々に上記を提供することはできます。
「直接関わる」「一切関わらない」の2択ではなくとも、いい気分になるものではなくとも、
重度のうつに進行してしまうのを防ぐ手助けにはなりませんか?
4.の方はうつっぽの対象ではないので、メールが行くと「そんなことはわかっている!」「嫌がらせか!」
という気分になる可能性もあります。
この「現時点でうつ病の方に送るとかえってよくない」という点などは
サイト&メールなどのテキストライティングの部分で不足している点があり、
修正していく必要があると認識しています。
悪意あるいたずらは、うつっぽを使わずともフリーメールを取得すれば、
どのような手段でもできるのではないでしょうか。
最後に、自殺の責任はだれもとれません。
うつの問題に関わろうとするとき、必ず自殺の可能性は起こりえます。
医師も、カウンセラーもみな「自殺させてしまった」という経験を持っているでしょう。
U2plus.jpのサービスでは幸いにしてまだ自殺の報告はありませんが、
サービス開始前から、利用者に自殺者がでることは想定しています。
しかし「自殺リスクがあるからやらない」からこそ、
民間でうつに積極的に取り組む企業がなく、サービスの選択肢が増えないのではないでしょうか。
企業としての法的な問題とは別にして、
東藤泰宏個人として、
「例え自殺者がでても、ひどい現状を変えられるのなら、誰かの助けになるのなら、罪を負ってもやる」
と覚悟しています。
そもそもそれが起業の理由であり、U2plusの存在意義です。
以上でお答えになっているか不安ですが、
今件について回答させていただきました。
とうどう
6/7追記:
私信での発言について多くの方に誤解されているようですので、説明させていただきます。
前提として「うつ病の人は一定の割合で自殺してしまう」という事実があります。これは友人間で相談に乗っていても、家族でケアしていても、もちろんWEBサービスであっても同様です。
「うつの方になんらかの形で関わる以上、自殺者がでてしまう可能性は認識しているし、個人としての覚悟がある」ということです。また文脈からは書き手のせいで読み取れないかもと思うのですが、この発言はU2plus全体に関してのものでした。何人かを救うために、何人かに死を与えてもいいという思想からでた発言ではありません。